人材系事業に精通、リクルートグループ各社の代表を10年以上にわたり歴任された経営者で、現在は株式会社メディアハウスホールディングス 代表取締役社長兼CEO 波戸内啓介さんにお話を伺いました。
経営者として、大切にしていること / よる森 研修の目的 / よる森 研修の成果 / 働く個人と、組織の関係 / 人生を自分で選択する / 成果が測りにくいものへの取り組み / 先行きが不透明な時代に大切なこと / 「信じる」ということ / よる森のテーマの一つ「Will」について / 予定調和のない よる森
※ダイジェスト版はこちら
インタビューの一部を抜粋・要約してご紹介します。
マネジメントポリシーとして「コミュニケーション&モチベーション」というワードをずっと大事にしています。
従業員と自分の間もそうですけど、お客様と我々、社会と自分というのも、いかにコミュニケーションをとって相手を理解するか、世の中を理解するかということと、やっぱりモチベーションが高いと、色んなものに前向きにチャレンジしたり頑張れたり出来ると思います。
社長としては、皆が生き生き働けるような場づくり、コーチング、監督責任…僕は野球をやっていたので一人三役だって言っているんですけど、グラウンドキーパーであって、コーチであって、監督であるということをモットーにしています。
観点としては二つあって、一つはチームビルディングが必要だと思いました。当時は優秀なエグゼクティブコンサルタントがたくさんいる組織で、一人一人は自立はしているけれど、チームとして、会社として、どう一体感を作っていくかということ。
もう一つは当時から話題になっていた内省ですね。内省をどうしていくかというキーワードが僕の中にあって、個々人が自分自身を見つめ直して、”どういう自分でありたいのか”、”どういうことをやっていきたいのか”、”自分の置かれてる立場はどうなんだろう”…というようなことを内省出来る場を設けられたらいいなと思っていて、「よる森」に参加させていただきました。
私自身、森の中の静かな空間で、鳥のさえずりとか、風の音とか、木々が揺れてなびく音とか、地面から伝わってくるエネルギーじゃないですけどそういうものを感じながらボーッとしていると、だんだん自分を見つめ直す雰囲気が出てきて、”自分って今までどういうふうに生きてきたんだろう”とか、”今やっていることはどうなんだろう”とか、”自分は何をやりたかったんだろう”とか、”今後どうしていきたいんだろう”とか、そういうものを感じることが出来たので、すごく有意義な場だったと思いますね。
チームビルディングの観点では、夜、焚き火を囲んで皆で話をするんですけど、そこで意外と皆さんの本音が出てきて、ああだよね、こうだよねという話があって。オフィスに戻っても、そんな話とか会話があって、もっとこういう風にしたらいいよねとか、そういうことが続いていましたね。風通しも何かいい感じになったし、色んなコミュニケーションが引き続き起こっていたので、良かったと思いますね。
内省という観点でいくと、僕は私はこの場じゃないんだなと、こんなことをやっていきたいんだということで、独立した人間も一人いますし、それはそれでいいと思っています。それぞれの人生を自分で決めて選択していくことがすごく大事だと思っていて。その選択が違うんじゃないかという場合は、残った方がいいとかとアドバイスもするんですけど、その人にとってその選択が正しいと思ったら応援をします。その時に、冒頭にあったように内省がすごく大事で、”自分は何をしたかったんだっけ”とか、”何をすべきなんだろう”とか、”今後どういうことをやっていくんだ”とかということを、見つめ直さなきゃいけないと思っています。
今とか今後…会社とか組織って何だろうとひいてみると、皆で集まって、何か成し遂げたいことに向かっていくというもので、それが外にいて一緒にやってもいいし、短期間やって離れてまたどこかで一緒になってもいいというように考えています。会社が従業員を雇ってずっと従属させるような考えは古いと思ってます。もし従業員に辞められたら困るというのなら、その場の魅力をもっと高めて、そこにいたい、この仕事をやりたいと思えるような場をつくっていくことは、経営者の仕事だと思いますね。
見えないものはあっていいかなと思いますが、それは経営ならトップが「信じる」ということだと思います。僕は「コミュニケーション&モチベーション」が高まることで成果が出るという考えを持っているので、研修をやったら何かの数字が変わるというのは出ないと思うんですけど、後から振り返れば良かったねというものだと思うんですよね。分からないけれどもそうなると「信じる」ことが大事で、そこにトライをするべきだと思います。やったもの勝ちかなという風に思いますけどね。
経営者は、正解がない中で判断をしなきゃいけない。よる森の研修もその一つだと思うんです。いわゆるトップの決め事、もしくは研修のヘッドが責任をもってやることが大事だと思います。そう思わなければやらなきゃいいという話です。
医学でも、西洋医学と東洋医学があって、東洋医学ってよく分からない部分もあるじゃないですか。それに近いんだと思うんですよね。ビジネスマンはスキルやハウツーなど西洋医学的なインプットをして、それを使ってビジネスをやろうとする。一方で東洋医学的な、ほわっとしてよく分からないんだけれども実は何か効くみたいな部分と、両面を持ってるとすごくいいと思うんですよね。
欧米のジョブスにしても、著名な経営者が禅を学んだり、欧米系企業は禅研修とかをやっているじゃないですか。あれって西洋と東洋のミックスみたいなもので。彼らはそれに気づいて、これはいいと思って取り入れていると思うんですよね。日本はもともとそういうものを持ってるわけで、人事評価制度だとか給与制度だとか色んなものがありますが、西洋的なものばかりを入れるのではなくて、うまく組み合わせてオリジナルなものをつくっていくべきだと思います。
世の中はスピード、あるいは変化が激しいので、スピーディーに判断をして、投資をして、だめだったらやめるか、方向転換をするというマネジメントの考えが大事だと思います。リーンモデルとか色々ありますけど、まずはやってみる。あるいはローンチしてみて、小ロットの人たちで使ってみて、バグなり不便さを把握して、修正をしていってブラッシュアップしていくみたいな…
ピンチはチャンスとか、大変な時代だからこそ何かやれるんじゃないかとか、マインドセットの問題も大きいと思いますね。物事を前向きに捉えられるかどうかというのがすごく大切だと思っています。その時に繰り返しになりますけど、”自分はどうしたいんだ”という内省に基づいた、方向性が決まっていれば、色んなものを捉えやすいと思うんです。自分の軸みたいなものがあれば、どんな変化でも、苦しい状況でも、乗り越えていける、判断が出来ると思います。
また、物事を見たり聞いたりする時に、常にフラットであることが大事だと思います。大人になっていくと、これは駄目だったとか、これは良かったとか、あれしちゃいけないとか…色んなフィルターを通して物事を見るようになると思うんですね。そういうものをとっぱらって、素の状態で物事を見るということ、あるいは何かが起こった時に何でこうなっているんだろうとか、なぜこういう変化が起こったんだろうとかということを、素で考えることが大事だと思います。そうすると何か見えてくるものがあるんじゃないかと思うんですよね。
多分、自分の中でのキャッチボールだと思うんですよね。自分と対話をしながら何かを見出していく、自分との1on1みたいなものを繰り返していくことが大事なのかなと思います。
ロジカルではなくて感覚的に、感じたり感じなかったり、匂わないんだけど匂いがある、ないというようなことを、判断しているんだと思うんですよね。僕自身がずっと内省だったり、軸を作り上げたりしているので、判断が出来るのかなと思います。だから分からなくてもチャレンジ出来たり、リスクテイクが出来たりするのかなと思いますね。
目の前の小さいものから始めてもいいと思います。日々の物の考え方とか、捉え方とか、感じ方とか…漠として見えない部分の判断をどうしていくか、これはある種の訓練なのかもしれませんね。うまくいくかどうかというのは分からないし、僕自身も失敗もありますが、そういう見えない中で、自分で決断をしていくというのは大事だと思います。
大切なことだと思いますね。素になって、自分を見つめ直して、”何がWillなのか”ということを問い続ける。日々問い続けると、変わっていくこともあると思うんですよね。常に、自分との対話を通じて、”どういう人生を生きていくんだ”とか、”どういう方向でいくのか”ということを問いながらやっていく。そういう場があるというのはすごく大切だと思います。若い人も、エグゼクティブの人も、やった方がいいんじゃないかと思います。
周りの経営者とかで、すごいなと思う人は何かやってますね、内省すること。
その方がいいんじゃないですか。自由に、自然に、なりゆくままにやらずに何かを意図したら、フィルターをかけ始めるわけですよね。それはかけない方がいいと思っていて。ルールとか何かがなければ、うまくその場が回らないというのは、皆を信頼してないんだと思います。
やっぱりフィルターですよね。これやっちゃ駄目、ルールだとか、常識だとか、礼儀だとか…があると、真の意味での内省って出来ないのかな、あるいはチームのコミュニケーションも出来ないのかなと思います。
(抜粋・要約:YORUMORI 河村)